交通事故でも健康保険を使うべき?利用するメリットについて

代表弁護士 吉田 聡 (よしだ さとし)

交通事故で負った怪我の治療に健康保険を利用することはできるのかなと疑問に思っておられる方は多いです。

「使えない」と聞かれたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、基本的には、交通事故による怪我の治療でも健康保険を利用することは可能なのです。

むしろ、健康保険を使った方がいいといえるケースも存在します。

この記事では、交通事故による怪我の治療で健康保険を使うメリットについてご説明します。

交通事故で健康保険を利用するために必要な手続き

交通事故による怪我の治療に健康保険を利用するためには、被害者が加入している健康保険組合、または管轄の協会けんぽ(国民健康保険の場合は、お住まいの役所の国民健康保険を担当する部署)に対して「第三者行為による傷病届」などの保険者が指定する必要書類を提出する必要があります。

また、健康保険を利用する場合には、医療機関に対して、まず、「健康保険を使いたい」ということを申し出ておく必要もあります。

健康保険を利用した方がよいケース

被害者側にも過失がある場合

過失がある場合には、過失割合に応じて過失相殺(過失割合の分だけ賠償金額から減額されること)がされます。

つまり、最終的に、治療費の一部を自らが負担することになるということです。

また、医療費は、それぞれの医療行為ごとに点数(診療報酬点数)が決まっており、1点あたりの単価を掛けることで金額が決まります。

自由診療の1点の金額は、健康保険を利用した診療の2倍程度と高額である場合がほとんどですので、健康保険を利用した場合の方が、治療費の総額自体が低額になります。

例をみてみましょう。

例えば、治療費が自由診療で200万円、健康保険診療で100万円、そして、治療費以外の損害が300万円あったという事案ではどうなるでしょうか。

まず、自由診療の場合です。

この場合、治療費の200万円はすべて被害者の損害ですから、総損害額は200万円+300万円で500万円となります。

これに、10%の過失相殺を行うと賠償金の額は、450万円となります。

ここから、すでに支払われている200万円の既払い金を引きますと、最終的に受け取ることのできる金額は、250万円となります。

一方、健康保険診療の場合は、治療費について、被害者が負担が負担するのは3割の30万円です。

損害は、自己負担分だけになりますから、被害者の総損害額は、330万円ということになります。

ここから10%の過失相殺をすると、賠償金の額は297万円となります。

すでに相手方に払ってもらっている治療費というのはありませんので、ここから既払い金が惹かれることはありません。

このように、自由診療の場合と比較して、健康保険を利用した方が、最終的に被害者の方が受け取ることができる賠償金の額は、大きくなるのです。

相手方が任意保険に加入していない場合

相手方が任意保険に加入していない場合にも、健康保険を利用した方がいいといえるケースが多いです。

相手方が任意保険に加入していなければ、自賠責保険の保険金を請求するしかないことになりますが、自賠責保険において支払われる傷害に関する損害(治療費だけではなく、休業損害や入通院慰謝料も含んだ損害です。)に対する保険金には、上限があります。

上限は120万円ですが、自由診療で治療を受けるとこの上限額をすぐに上回ってしまうことがあります。

ここで健康保険を利用すれば自由診療よりも治療費を低くおさえることができますので、120万円の枠を有効利用することができるのです。

治療費が打ち切られた場合

交通事故で治療を受けていて、まだ治療が必要とである医師が判断しているにもかかわらず、保険会社が治療費や休業損害の支払いの打ち切りを打診してくることがあります。

このような場合、弁護士にご依頼いただいていれば、弁護士が支払いを続けてもらえるように保険会社と交渉しますが、それでも打ち切られてしまうというケースもあります。

しかし、保険会社が打ち切りの判断をしていても医師が治療の必要性があるとしている以上、治療は続けるようにしなければなりません。

ですがそのような場合には、自分で治療費を立て替えなければならないわけですので、健康保険を利用して窓口で負担する金額を抑えた方がよいということになります。

交通事故でお怪我をされた場合には、弁護士にご相談ください

このように、交通事故で負った怪我であっても健康保険を利用することができますし、利用した方がよいというケースも少なくありません。

保険の利用も含め、治療の受け方を保険を間違えると、結果的に大きな損をしてしまうこともあります。

ですから、交通事故の被害にあってお怪我をされた場合には、治療が終わって示談を行う場面になっていなくても、治療中からお早めに弁護士にご相談ください。

当事務所では、通院中から、あらゆる制度を念頭においたアドバイスをさせていただいております。

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