過失割合に影響を受けない?労災保険を使うメリットとは?
業務中や通勤中に交通事故にあわれた場合には、労災保険の対象となることがあります。
一方、交通事故では、自賠責保険も利用することができますし、任意保険から保険金を受け取れる場合もあります。
この記事では、交通事故で労災保険を使うメリットはあるのかについて、自賠責保険との違いに触れながら、ご説明していきます。
労災保険とは
労災保険とは、労働者災害補償保険法に基づく制度で、業務災害(労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡をいいます。)又は、通勤災害(労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害、死亡をいいます。)を被った労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。
交通事故も労災保険を使える場合がある
交通事故であっても、業務災害や通勤災害にあたるケースであれば、労災保険を利用することができます。
業務災害となる交通事故
業務災害と認められるのは、「業務遂行性」(使用者の支配管理下で就業している状態)と「業務起因性」(業務と死傷病等との間に一定の因果関係があること)が認められる場合です。
業務時間や業務時間内の休憩中、出張中に交通事故にあった場合です。
通勤中の交通事故
通勤中の事故と認められるのは、就業に関し次のような移動を合理的な経路及び方法で行っていた場合です。
- ・住居と就業の場所との間の往復
- ・就業の場所から他の就業の場所への移動
- ・住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
自賠責保険との関係
交通事故の場合、労災保険給付と自賠責保険等(自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済)による保険金支払いのどちらかを先に受けることになりますが、どちらを先に受けるかは、被害者が選ぶことができます。
ただし、二重に賠償を受けることができるわけではありません。
また、任意保険会社からの賠償か労災保険給付かのどちらかを先に受けるかについても、被害者が選ぶことができます。
労災保険の特徴
後遺障害の等級認定制度
労災保険においては、自賠責保険と同様に、後遺障害等級認定制度があります。
原則書面審査である自賠責保険の場合とは異なり、労災保険においては、労災保険の指定医と面談があります。
慰謝料の補償がない
労災保険では、慰謝料の給付がありません。
自賠責では慰謝料も補償されるのとは異なります。
休業補償について
自賠責保険では、休業損害が原則として100%支給されます。
一方、労災保険では、休業補償が60%、休業特別支給金20%の80%しか補償されません。
なお、上記労災保険の「休業特別支給金」は、重複と見なされませんので、自賠責保険の休業損害と合わせて受け取ることができます。
交通事故で労災保険を利用するメリット
休業特別支給金の支給を受けることができる
先ほどご説明したように、休業特別支給金は、相手方の任意保険会社や自賠責保険から休業損害を受け取ったとしても、重ねて支給を受けることができます。
自賠責の上限額を有効利用できる
労災保険においては、支払われる治療費の上限がありません。
一方、自賠責保険には上限があります。
ですから、特に相手方が任意保険に加入していない場合には、自賠責保険の上限である120万円を超えてしまうと、その分を回収できない可能性がありあます。
(加害者本人に請求することはできますが、支払い能力がない場合は少なくありません。)
ですから、このような場合には、労災保険を優先的に利用することにメリットがあります。
これによって、自賠責保険の上限枠を有効利用することができるのです。
過失相殺がなされない
労災保険では、被害者に過失があったとしても、過失相殺がなされません。
自賠責保険でも、小さな過失の場合は、過失相殺はなされませんが、過失の割合が70%を超えると、一定の割合で過失相殺がされて減額されることがあります。
ですから、そのような場合には、過失相殺の問題が生じない労災保険を利用することにメリットがあります。
治療費が打ち切られても立て替える必要がない
治療の途中で、任意保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合があります。
そのような場合、弁護士にご依頼いただければ弁護士が保険会社と交渉を行いますが、保険会社は、いったん下した打ち切りの判断を変えないことは多くあります。
そのような場合には、労災保険を利用すると、自分で治療費を立て替えることなく治療を継続することができます。
ですから、治療費を打ち切られた場合には、労災保険に切り替えることにメリットがあります。
示談における注意点
相手方との間で、示談額以外の損害賠償の請求をしないという内容の示談成立した場合には、原則として示談成立以後の労災保険の給付は行われないことになっています。
請求権を放棄する旨の示談が真正に成立した場合には、仮にその金額以上の給付額が見込まれるケースであっても、労災保険からは一切給付を行わないこととなるのです。
ですから、労災も対象になるようなケースでは、示談の際の示談書の文言に十分注意する必要があります。
示談書を作成してしまう前に、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
業務中や通勤中に交通事故にあわれた場合には、当事務所にご相談ください
交通事故で問題となる保険は、自賠責保険だけではなく、複数あります。
労災保険もその一つです。
ですが、どのようなケースにどのような制度を利用すればよいのかを判断することは容易ではありません。
専門的な知識が必要となってきます。
当事務所では、治療中からご相談いただければ最適な方法をアドバイスさせていただいておりますので、ぜひぜひお早めにご相談ください。